「枕」を辞書の広辞苑で調べると、「寝る時に頭を支えるもの」とあります。私たちが寝る時に、大半の人は利用しているだろう「枕」ですが、その起源はどのようなものだったのでしょうか。
アウストラロピテスクも使っていた?!
きっと原始時代においても、腕を枕にしたり、草や石などを枕代わりにして使っていたのだろうな・・となんとなく想像できます。記録に残っているところでは、約400万年から200万年前に生息していた初期の人類であるアウストラロピテクスが、頭蓋骨の下に自然のものではない人為的に砕かれた石を敷いていた様子が化石により確認されています。ただしこれは、寝具として「枕」として使われていたのか、祭事的な意味合いで使われていたのかは定かでありません。
権力の象徴という意味合いも
枕というのは寝具としてだけ使われていたのではなく、権力者の象徴として使われてきた経緯もあります。日本においても古墳時代、その埋葬者に対して、様々な材質を使った枕が使われてきました。次回はそのあたりのことを、もうちょっと詳しくひも解いてみたいと思います。
古墳時代からの枕の変遷
石の枕が主流?!
奈良県にある天理大学付属の「天理参考館」には、古墳時代の石枕が展示されています。
これは自然石を頭の形に合わせてくり抜いたもので、古墳に葬られた人が頭を乗せていたものです。
実際に使う場合は(このままでは硬いので)草や皮などを敷いて使っていたのではと推測できます。
古墳から見つかった「枕」には石枕のほかに、粘土を焼いて作ったものや、ガラス玉に糸を通して編んだものなどが見つかっています。
力や富を示していた枕
古墳時代のものと確認された「枕」は全国で200に届きません。
日本には約16万の古墳が見つかっていることから考えれば、これは非常に貴重な発見と言うことができるでしょう。
そのうちの150ほどは石枕で、面白いのは自然石をそのまま「枕」にしたものよりも、前述のように硬い石をわざわざ削って「枕」に仕上げたものの方が多いということ。このことから「枕」は、葬られた人の力や富を示す、権力の象徴として使われていたという見方が一般的です。
枕の変遷を駆け足で紹介
そして時は流れ、時代によって枕は変化していきました。駆け足で紹介すると、奈良時代には木の枕や草で編んだ枕が使われていました。
木の枕は丸太をそのままカットしたものが使われた一方、四角く削るなど整形されたものも使われるようになりました。
江戸時代になると、時代劇などでもおなじみの箱枕が誕生します。これは髪型を崩さないように、首を乗せて使いました。
明治時代以降も陶製の枕など、様々な枕が登場。今のような平らな枕が登場したのは、昭和初期頃と言われています。